"purple rain special edition"
princeの代表作"purple rain"のスペシャルエディション。
相当数の未発表音源があるとさえれるprince。これまでにも、ブートレッグが流出したり、複数枚組のアルバムをリリースしたりと、その多作ぶりは有名だ。というか、実はなにも考えずに曲を思いつき、セッションし、演奏し、それをテープに収めるということが、日常的に行われ、その中からヒット性のあるものだけをピックアップし、これまで正規盤としてリリースしてきたにすぎなかったのではないか、とそんなことをふと思ってしまう。
アルバムを出すから、曲を書こうとか、シングルを出すから、曲を書こうとか、そういうことではなく...
ぼくが最初に衝撃を受けたのは、ブートレッグで出回り、最終的には正規盤としてリリースされた"black album"。そして、同じくブートレッグで出回った、マイルスデイヴィスとコラボレーションしたとされる"crucial"。最近では、ぼくはそれをyoutubeで聞くことになったのだけれど、デビュー前、若干18歳のプリンスがバンドのメンバーとセッションする音源。
きれいに髪型を整え、衣装を着て演奏しているのが、正規でリリースされてきたアルバムだとすれば、これらブートレッグや正規のレールから少しはずれたかたちでリリースされる音源というのは、朝起きたままの髪型で、普段着姿のprinceが、スタジオで思いつくがままにプレイしている様を想い起こさせる。
その演奏は、けっしてリラックスしたゆるいムードの音楽ではなく、むしろ尖っていて、加工前の原石のような音楽だ。
もちろんぼくは、未発表の音源が聞きたくて、このスペシャルエディションを買ったわけだけど、CDをセットすると、いきなりカッコいいダンスチューンがはじまり、ぼくはしたたかに焦ってしまう。
"black album"の収録曲などもそうだが、基本的に曲としてまとめようとしていないこの手の曲は、とりとめなく長い。展開や盛り上りは、演奏しながら波が来るのを待っているようでもあり、それはアドリブのセッションを思わせる。そして、まさにここが、princeの音楽の原点なのだ。
なにも考えなくていい。ただカッコいい。クール。体が反応する。細胞が蠢く。
頭で考えて書かれた音楽が多い気がする。歌詞がどうだとか、言いたいことがどうだとか、下手すると、会議室で意見を出し合いながら曲を書いていたりとか。
みんなの意見を取り入れて、多くの人の価値観から外れないようにして、内向きな音楽、老人たちが好む大喜利のような音楽が出来上がる。一見、それは独特な文化のようにも見えるけど、一歩外に出れば、軽いパンチでいとも簡単に倒されてしまうだろう。
princeはわかりやすかった。ぼくにとって、とてもわかりやすいお手本であり、心のささえでもあった。頭で考えて最大公約数を導き出すこともできたし、箸にも棒にも掛からぬような原石を生み出すこともできた。
princeがいなくなってしまったことの喪失感は、当初思っていたよりも大きい。こういうアルバムを聞いてしまうと、大変なものを失ってしまったことに気付かされる。
#y_yuki
#yoshihiro_yuki
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