これまでのレパートリーを一度全部捨ててみようと思う
昨年末、茨城でのライブの帰り道、夜の常磐道。ぼくはひとり車を走らせていた。カーラジオからは、聞いたことのない名前のアーティストの曲が流れていた。多分、最新のクラブミュージックの類だ。ぼくはその音楽にシンパシーを感じていた。
アルバム"グランジ・ソウル"の収録曲は、どれもライブには、とくにギター一本で演奏するには不向きな曲ばかりだ。おまけにこれまでの楽曲とは趣が異なるため、今後のライブのやり方は懸案事項のひとつだった。
一切ライウはやめてしまおうか。アルバムの曲は一旦棚上げして、今までの曲だけでライブを続けようか。
守谷のサービスエリアに車を停めてコーヒーを飲みながら、ぼくは2017年にあった出来事を思い返してみた。アルバムに終始した一年だったことは言うまでもないが、それは自分と向き合うことを強いられた一年でもあった。
その年の最後のライブ、ぼくはアルバムの収録曲を1曲もやらなかった。
アルバム"グランジ・ソウル"は、なにか特別なことをやろうとして作ったアルバムではない。自分を変えようとか、新しいステップを踏み出そうとか、そんなことを企んで作ったアルバムではない。それはきわめて等身大な作品で、自分の気持ちを素直に表現しただけの作品だった。
相変わらずラジオから流れているクラブミュージックを聞いているうちに、ぼくはやるべきだという気持ちに支配されていった。そして、それが出来るような気がしていた。
一度ここですべてをリセットしてみよう。これまでのレパートリーを、一度捨ててみよう。車の中でコーヒーを飲みながら、ぼくはそう思った。
そしてその日のライブが、結城義広としての最後のライブだったのかもしれないと思った。
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